八光流柔術には、武技だけでなく、東洋医学の経絡理論に基づく「護身体操」や「皇法指圧」が伝えられています。
今回は主に、奥山龍峰・初代宗家が創案した「護身体操」と、その背景にある「武医同術」の思想についてご紹介します。
奥山龍峰・初代宗家が創案した「護身体操」
八光流柔術に伝わる護身体操とは、12経絡を整える12の運動からなり、八光流柔術の奥山龍峰・初代宗家が創案したものです。
初代宗家は、「肥田式強健術」で有名な肥田春充師の高弟・平田内蔵吉(了山)師に皇法医学を学び、護身体操や皇法指圧を体系化しました。
護身体操も皇法指圧も、経絡の概念がベースになっています。
経絡とは東洋医学的な身体の見方で、全身を流れる「気」のルートのことです。
主要な経絡は12本あり、それぞれ12の臓腑と関連づけられています(正中線を流れる督脈と任脈を合わせると14本)。
12の運動は下記の順番で行いますが、この中でやりにくい運動があれば、それに対応する疾患が疑われるとともに、その改善効果をもたらすとされています。
- 第一運動…胃経(全内臓拡張作用)
- 第二運動…脾経(栄養関係内分泌作用)
- 第三運動…膀胱経(全内臓収縮作用)
- 第四運動…腎経(生殖関係内分泌作用)
- 第五運動…胆経(拡張収縮調節作用)
- 第六運動…肝経(生殖栄養調節作用)
- 第七運動…大腸経(全内臓挙上作用)
- 第八運動…肺経(血液新陳代謝作用)
- 第九運動…小腸経(全内臓牽引作用)
- 第十運動…心経(血液循環作用)
- 第十一運動…三焦経(挙上牽引調節作用)
- 第十二運動…心包経(代謝循環調節作用)
八光流柔術の武技も身体を整える効果は非常に高いのですが、二人一組で技を行うため、稽古相手が必要となります。
一方、護身体操は一人で自宅で気軽にでき、健康法としても武術的身体の養成にも優れたものです。
経絡を通じて、内臓まで強化できる護身体操は、まさに武術と東洋医学の叡智が結集したものでしょう。
武術と医術は表裏一体だった
「武医同術」あるいは「殺活自在」という言葉があるように、古来より武術と医術は表裏一体のものと考えられていました。
効率的に「身体を壊す技術」は、逆方向に使うことで「身体を治す技術」にもなるわけです。
江戸時代頃までは武芸十八般という言葉通り、剣術・弓術・柔術・棒術などあらゆる武技(18種類)を総合的に学び、身体の整復法・活法も合わせて学ぶものでした。
その名残として、柔道から派生した柔道整復師(整骨・ほねつぎ)という資格も存在しています。
なお、古武術(江戸時代までの武術)と八光流柔術の関係性については、記事「古武術・スポーツ武道・格闘技と違う、八光流柔術の存在意義」をご参照ください。

また、中国武術家の場合も、職業が鍼灸師、指圧師、按摩マッサージ師などの治療家であるケースは多々見られます。
しかし、現代武道では武技だけでも剣道、柔道、空手道、合気道、弓道など細分化しており、整復法・活法を合わせて学ぶ風習は消えつつあります。
ちなみに、鍼灸や指圧では経絡上にある経穴(ツボ)を治療点として用います。古流柔術でも、そのツボを急所として当身のターゲットにすることが多いのです。
一方、八光流柔術、および皇法指圧・護身体操では、「点」のツボではなく「線」の経絡を意識して活用します。
「武医同術」を守り続ける八光流柔術
ますます武術と医術の分断が進む現在も、八光流柔術では皇法医学を脈々と伝承しています。
明治から昭和初期にかけて、古武術から現代武道の時代に移る中、奥山龍峰・初代宗家は東洋医学の叡智に西洋医学の視点も融合し、皇法医学を体系化しました。
東洋医学については、その道の大家であった南拝山師と平田内蔵吉(了山)師から多大なる薫陶を受けています。
また、書籍『皇法指圧治方学』(初代・奥山龍峰・著)の巻頭には5名の医学博士・医師から推薦文が寄せられており、西洋医学からの絶大な信頼も伺えます。

皇法医学の治療術では、主に指圧(皇法指圧)を用いますが、経絡理論に基づく「経状反応」だけでなく、急性の症状には身体各部を輪切りで関連を診る「帯状反応」という独特の診断・治療理論も活用していくのです。
前述の書籍では、皇法医学の概論、診断法、治療術(指圧)などに加え、「正息の法」「護身体操」「護身簡約体操」なども解説されています。
書籍でこれらの概要を知ることはできますが、当然ながら、実際に講習会に参加しないと理解できない部分は多々あります。
ご興味がある方は、ぜひ実際に体験し、修得されることをおすすめします。
護身体操は、もちろん健康法や潜在能力開発法として非常に優れていますが、八光流柔術の技術を底上げする身体作りとしても効果絶大です。
また、各動作では気合と踏みつけによって心身の中心(肚)を養い、内観能力と危険察知能力が高まってくるのです。
だからこそ、深い意味で護身につながっていくのでしょう。
「自分の周りから争いがなくなっていく」という生き方や、「護身道」については、記事「なぜ、八光流柔術では試合を行わないのか?」もご参照ください。

この護身体操を日々実践するとともに、自分の道場でも皆さんと共有していきたいと思います。
八光流柔術の魅力は、実際に身体で体験してこそ伝わる部分も多くあります。
護身道シブヤは、初心者の方にも安心して参加していただける少人数クラスで行っています。
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