柔術には本来、「当身」と呼ばれる打撃技法があります。
前回の記事では、空手やキックボクシングの打撃との違いをご紹介しました。今回はさらに踏み込み、八光流柔術に伝わる当身の具体的な用法についてご説明します。
八光流柔術の当身はどのようなもの?
今回は、八光流柔術の当身について簡単にご紹介したいと思います。
前回の記事「空手やキックボクシングの打撃と柔術の当身の違いは?」を踏まえて、お読みいただければ幸いです。

まず、八光流柔術は「護身道」であるため、自分から前に出て当身はしません。あくまでも、相手が来るから、それに対して当てるのです。
なので基本的に、空手やボクシングのような「構え」から当身を繰り出すことはしません。
ちなみに八光流柔術には、「八光の構え」といって、片手を開いて相手のほうに伸ばし、もう一方の手を背後に置く構えが存在します。これも攻撃する意思はなく、あくまでも身を守るための構えです。

当身を用いる状況としては、大きく分けて下記の三つがあります。
- お互いが離れた状況での当身(迎撃)
- 相手がこちらを掴んでいる状況での当身(崩し)
- 相手を崩し固めた状況での当身(極め)
また、八光流の当身で用いられる主な方法・部位は下記となります(ここでの「迎撃」「崩し」「極め」は、私の個人的な解釈となります)。
目潰し
相手の目に対し、四指の背面ではじくようにして、当て引く。
濡れタオルや鞭で「バチン!」と打つように、手首・肘・肩を脱力して行う。
目に怪我をさせる目的はなく、一時的に視界を奪うためのもの(崩し)。

母指
母指で指圧する際の手を用いた当身。
拳を軽く握って親指だけ人差し指の側面に添えて伸ばし、親指の先(やや指の腹から柔らかく)を当て引く。
防御反応をさせないように触れ、内部に入れてから早く引くことで効かせる。
相手を崩し固めてから、緊張がある身体部位に対して「極め」で使うことも多い。

手刀
手のひらの小指側の側面で、相手の手首、側頭部(胆経)、頬骨などを当て引く。
空手のように四指を揃えて親指を曲げる手刀ではなく、手をパッと開き、手首・肘・肩を脱力して、最大限に重さを乗せて打つ。
手刀でも、引きを重視する。
拳で突いてきた相手の手首の急所を、打ち払う際も用いる(迎撃)。なお、武器を握っている手の手首は緊張が出やすいため、さらに効果的。

人差し指の第二関節
人差し指の第二関節を鋭く曲げて尖らせ、急所に入れ込む当身。
相手を固めてからの「極め」として、頸動脈を狙ったりする。

踵
例えば、相手を転がした後に、まだこちらの手を掴んですがっている時、その腕から緊張が延びている脇腹を、上から踏み当て引く(極め)。
踏みつけて怪我をさせるのではなく、緊張によって生じている抵抗の意思を解くように「トンッ」と行う。

上記の他にも、肘、四指の先、膝、上足底、つま先など、様々な部位で当身ができるようにしておきたいものです。
いずれも、空手ほど部位鍛錬をしておく必要はなく、誰でも使いやすく、効果を出しやすい当身となっています。
また、当身の一種ともいえそうですが、技の展開の途中で身体各部の急所を地味にグリグリと刺激して痛める技法も用います。
これによって相手は思わず心身ともに崩しが入るため、以降の技をスムーズに展開できるのです。
また、八光流柔術の代表的な技の一つ「雅勲」は、経絡への刺激も用いて相手の体勢を自在に崩すものであり、ある意味では当身に類する技法かもしれません。ただし、痛みを与えることが主目的ではありません。
型にとらわれず離隔で当身を使う
ここまでは、主に型の中に出てくる当身についてご紹介しました。
しかし、実際の場面では自由に当身を使いこなす必要があります。
空手やキックボクシング、あるいはストリートファイト的にパンチやキックで襲われるような咄嗟の状況では、至ってシンプルな技法が使いやすいでしょう。
最近、八光流本部道場長の奥山貴士先生が教えてくださった方法は、パンチやキックに対して、脱力して重みが乗った手刀で打ち払う方法です。
前蹴りから逆側のフック(足と手が対角線のコンビネーション)に対してと、前蹴りから同側のフック(左右同じ側の足と手のコンビネーション)に対しての2パターン(基本)です。
この稽古を行うと、攻撃したほうの足首と手首に、強烈な痛みが走ります。
前蹴りに対しては、脛の下のほうの内側の急所を打ち払います。
フックに対しては、迎え撃つように手首の内側(親指の延長ライン)の急所を打ち払います。
私も空手時代に、前腕同士や脛同士をぶつけ合う稽古を少し経験していますが、的確な八光流柔術のカウンター当身は想定以上に痛く、かなり痺れます。
こちらが強く攻撃すればその威力が倍になって返ってくるため、一発で追撃の意思が失せるほどです。
以上のように、八光流柔術では型にしっかりと当身が組み込まれていながら、さらに実際の場面でも使いやすいシンプルな運用も可能です。
また実は、皆伝秘技にも「とっておきの当身」があったりするのですが、それは皆伝師範の教伝を受ける時まで、お楽しみにしていただければと思います。
八光流柔術の当身は、相手を傷つけることを目的としたものではなく、崩しや技の展開を助けるためのものです。
興味を持たれた方は、ぜひ一度体験稽古にお越しください。当身の稽古でも安全には最大限配慮し、適切に加減をしながら稽古しております。
八光流柔術の魅力は、実際に身体で体験してこそ伝わる部分も多くあります。
護身道シブヤは、初心者の方にも安心して参加していただける少人数クラスで行っています。
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