八光流柔術は、古武術ともスポーツ武道や格闘技とも異なる、日本独自の身体操作に基づいた現代の護身武道です。本記事では、2000年頃に起きた古武術ブームの背景から、日本人の身体文化、そして八光流柔術が現代において持つ意味と実用性について解説します。
日本人の生活様式と身体操作の変遷
私が武術の雑誌と書籍を柱とした出版社に入社したのは2005年ですが、その少し前の2000年頃から、古武術ブームが巻き起こっていました。
古武術、つまり明治維新以前までに成立した武術の身体操作を応用することによって、読売ジャイアンツの桑田真澄投手が奇跡の復活を遂げたり、桐朋高校のバスケットボール部が活躍して、各種メディアで取り上げられていたのです。
また、明治維新以前の日本人の歩き方といわれる「なんば歩き」も注目されていました。
江戸時代まで和服を着て畳で生活していた日本人ですが、明治維新以降は徐々に洋服や椅子での生活も増えていきました。それでも昭和中期頃までは、まだ和服や畳での生活は根強く残っていたようです。
日本人の伝統的な生活スタイルと身体操作には、密接な関わりがあります。伝統的な着物では、着崩れしないように体幹を捻らない動作が求められました。下駄や草履なども靴とは違って、足を大きく振らない歩き方に適していました。また、畳での坐臥は股関節や足首関節の柔軟性が養われます。
運動理論に関しても、明治維新後は西洋のトレーニング理論が一定程度取り入れられたと考えられますが、昭和初期頃までは、まだ日本人独特の身体操作は多く残っていたと想像します。
しかし、太平洋戦争後には、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)によって武道が禁止された時期もあり、急速に西洋の運動理論やスポーツ科学が広まり、完全に主流となっていきました。
古武術の理合と現代的課題
日本人の伝統的な身体操作の中で生まれた古武術では、骨盤を真っ直ぐに立て(あるいは、やや後傾)、仙骨から頭頂に軸を通す(天と地を繋ぐ)姿勢が重要です。もちろん、様々な動きの中で外面の姿勢は変化しますが、中心(丹田)の感覚があることで、外から見えない軸が通った状態を保ちます。
また、同側の手足を連動させることが多く、筋肉からの出力は最小限の動きに使い、脱力によって重力エネルギーを最大限に使います。
そうすることで、相手が反応できない動き、対抗できない動きを生み、単純な体力差を覆す可能性が出てきます。
ただし、古武術は基本的に、その時代の状況を前提として成り立っています。例えば、和服、あるいは甲冑を身に着け、剣や槍、短刀などの武器を所持している状態です。そのため、武器術がメインになり、柔術でも相手は武器を持っている想定が多くなります。
現代の護身に置き換えると、日本ではまだ幸い銃に対応する場面は少ないため、ナイフのような短めの刃物、バットやバールのような長尺の道具、ビール瓶など身近にある物への対応が考えられます。それらは、古武術の技法によって、ある程度の応用は効くように思えます。
しかし、古武術で想定していないボクシングや空手、総合格闘技(MMA)などの技術で向かってくる相手には、明確な対応方法が示されていません。
古武術と現代武術の「橋渡し」
八光流柔術が生まれたのは昭和16年(太平洋戦争が始まる年)であり、古武術とはいえません。古武術の理合が色濃く残っていた時代と、スポーツ武道・格闘技が隆盛となっている現代の、ちょうど境目あたりに誕生したといえます。
だからこそ、八光流柔術は、伝統的な日本人の身体操作や精神のあり方を受け継ぎつつ、現代でも使える護身術として完成されています。つまり、古流武術と現代武術の橋渡しとなり、伝統的な日本武術の理合を現代に引き継ぐための鍵となる存在といえるでしょう。
同じく、日本武術の理合を引き継いでいる合気道と、八光流柔術の違いについては、こちらの記事に書きました。
実は八光流柔術には、現代武道や格闘技を使う相手を想定した技も存在します。例えば、「巻込」は柔道家が背負い投げにくる場面を想定した技であり、「突身捕」はボクシングのボディストレートや空手の中段突きに対する技です。そのほか、フック(鉤突き)や、掴みからの膝蹴りに対する方法なども数多くあるのです。
八光流柔術は、最先端のスポーツ武道や現代格闘技、あるいは軍隊格闘術とは異なり、クラシカルな印象を持たれるかもしれません。しかし、日本伝統の身体操作を現代でどのように活かせるのか、その道標となる技法やヒントが凝縮されているのです。
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